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鼓膜の持つ3つの機能

鼓膜は、ダイアフラムである

ダイアフラムとは、圧力の作用に応じ、変位を生じる弾性隔膜のことであり、①圧力計②振動板③ポンプなどに利用する。(辞典から)

鼓膜は、ダイアフラムの一種である。
故に、鼓膜は①②③の物理的機能を持っている。

ダイアフラムの用途 鼓膜の機能 機能に影響する物理的特性
圧力計(ゲージ圧センサー) 外気圧の変化を知るセンサー(ゲージ圧センサー) バネの復元力
振動板(電話機、聴診器「A.E検査の振動板」)AcousticEmission 音波に対する振動板「OAE検査の振動板」AcousticEmission バネの固有振動数
ポンプ(ダイアフラムポンプ) 中耳調圧ダイアフラムポンプ バネの弾性エネルギーの蓄積と放出

タイヤゲージ圧センサーの仕組み

タイヤ空気圧=ダイアフラムバネ応力+大気圧・・ニュートンの釣り合いの式

ダイアフラムバネ応力=ゲージ圧=圧差として表示される

つまり開放腔(大気)と閉鎖腔(タイヤ腔内)の圧差を示す

中耳(ゲージ)圧センサーの仕組み

大気圧=鼓膜バネ応力+中耳圧・・ニュートンの釣り合いの式

鼓膜バネ応力=鼓膜バネ定数×変位鼓膜面積=ゲージ圧=圧差

つまり開放腔(大気)と閉鎖腔(中耳腔)に圧差が生ずると鼓膜が変位し、耳閉感・耳痛として知覚される

『ピーク圧』と『ゲージ圧』の違い

ティンパノグラムで|ピーク圧|=0の人に対して,加圧室で150daPa加圧した時、|ピーク圧|は、鼓膜バネ定数とは全く無関係に、下図のように全て|150daPa|を示す。

一方、ゲージ圧は、下図のように鼓膜バネ定数によって大きく異なる。
ピーク圧とゲージ圧の関係を式で示せば、

中耳調圧ダイアフラムポンプ

外力を加えて大気圧と圧差(=ゲージ圧)を発生させ、それを利用したものをポンプという。

そして外力(=ピーク圧×鼓膜面積)によって発生する圧差が大きい程強いポンプといえる。即ち、鼓膜バネ定数の大きい方がバネ応力(=圧差)は大きく、中耳調圧ダイアフラムポンプは強いことになる。

一方、ピーク圧は、中耳腔に過不足している気体粒子数も表している。(この説明は「滲出性中耳炎とその後の調圧不良について」を読んでください)

従って同じピーク圧(補充すべき気体粒子数は同じ)で耳管通過性が同じならば、鼓膜(ダイアフラム)バネ定数の大きい、大気圧と大きな圧差を発生させる、強いポンプの方が圧緩和時間は短くなる。従って、調圧能はダイアフラムポンプの強さ(鼓膜バネ定数)と管(耳管通過性)に依存していることになる。

まとめ

『ピーク圧』、『ゲージ圧』という言葉は、ティンパノメトリーやゲージ圧センサーを物理学に基づいて作った機械屋さんの言葉である。我々医師は機械屋さんではない、故にピーク圧、ゲージ圧という言葉を小、中、高、大学で教わったことはない。しかし理科・物理は、小、中、高、大学で学んでいる。『ピーク圧』や『ゲージ圧』という言葉の定義を科学的に正しく理解しておかなければ、中耳調圧や中耳圧に関してとんでもない学説が生まれることになる。中耳圧は、大気圧±ゲージ圧であって、大気圧±ピーク圧ではない。負のピーク圧の値が大きくても大きな負圧とは言えない。ティンパノメトリーでは中耳圧測定はバネ応力を算出しなければ不可能であるにもかかわらず、中耳調圧や中耳圧に関して中耳圧=大気圧±ピーク圧とした学説が日本では厳然と存在し、広く流布している。そして『ピーク圧』も『ゲージ圧』も科学的に理解しようともしない耳鼻咽喉科医(元教授、現役教授を含む)にはその学説が信じられている。その学説とはガス産生調圧説である。間違った学説は、必ず弊害を生む。それは、『鼓膜はいくらへたってもかまわない。Mastoidが調圧してくれるから』という元教授の一言に集約されている。

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